パワーストーンという言葉を耳にすれば「神秘のパワーを授けてくれる石」をイメージする方がいるかもしれません。
人によっては「パワーストーンで金運が上がりそう!」と、前向きな捉え方をすることがあるかもしれません。
しかし、パワーストーンは、あなたの金運をアップさせるどころか、下げてしまう可能性すらあります。
そして、マルチ商法や詐欺師の人達からは、パワーストーンをしているだけで「おっ、カモおるやん。ラッキー!!」とロックオンされることも……。
香ばしさ満載のパワーストーンについて、解説していきましょう。
こちらの記事を読んでいただくことで
- パワーストーンの起源
- パワーストーンに科学的根拠なし
- ニューエイジとスピリチュアルの関係
- 実はパワーストーンの購入で金運がダウンする理由
- パワーストーンが詐欺師を引き寄せてしまう理由
上記の5項目について、解説します。
目次
パワーストーンの起源
パワーストーンという言葉が、普通に使われるようになると、あたかも最初から存在しているように感じるかもしれません。
ほとんどの言葉は掲載されている『大辞林』で、パワーストーンという言葉の意味を調べてみました。
「パワーショベル」「パワーステアリング」と続き、「いよいよ、パワーストーンのお出ましか…」とドキドキしたのも束の間です。
「パワーセンター」と続き、「あれれ?」と拍子抜けです。
パワーストーンというワードは、ついぞ見当たりませんでした。
それもそのはず、パワーストーンは近年できた造語です。
日本でパワーストーンという言葉を最初に使ったのは、マギーさんといわれています。
マギーといっても、最近、ベンツでイケメンレーサーのお持ち帰りをスクープされた美人モデルの方ではありません。
神秘学研究家のマギーさんです。
彼女が1992年9月25日に二見書房から出版した『パワーストーンの不思議―強運を招く守護石の神秘』の中で、パワーストーンというワードが、日本で初めて使用されました。
ちなみに『パワーストーンの不思議』は、Amazonから中古で購入する場合、500円あれば送料込みで買えるワンコイン価格です。
興味をお持ちの方は、読んでみてください。
パワーストーンに科学的根拠なし
結論から述べましょう。
パワーストーンに科学的根拠など存在しません。
パワーストーンという言葉自体が、マギーさんの本でふわっと使われるようになり、そこから便利な言葉として広がっていっただけなのです。
問題は「誰にとって便利だったか?」という点でしょう。
それはパワーストーンを販売することで、「金儲けできる!」と企んだ人達です。
そういえば、堀江貴文さんがこんなことを口にしていました。
「古伊万里は元々安くて庶民が使っていた陶器。それをある鑑定士が価値を吊り上げた」
その鑑定士とは、『何でも鑑定団』に出演していた中島誠之助さんです。
『AERA dot.』のサイトの『鑑定人・中島誠之助氏が仕掛けた「古伊万里ブーム」の内幕(2012年7月18日の記事)』の中で中島さんご本人が語った言葉を紹介しましょう。
「古伊万里は生活雑器ですから骨董の世界では商いの対象外。でも、売り方次第では面白い」と述べられています。
生活雑器というのは、金銭的が低い庶民的な陶器です。
中島さんの言う「売り方」とは、古伊万里自体のブランディングを自ら行い、高価な陶器にしてしまうことです。
うがった見方をすると、そのために『何でも鑑定団』に出演して「いい仕事してますね~」を連発したのかもしれません。
最もいい仕事をしていたのは、中島誠之助さん当人だったのですが(笑)、なかなかの商売人です。
パワーストーンも全く同じです。
石自体には高い価値がないものの、あたかも効果があるように演出することで、大きな儲けを生み出す産業になったのです。
まさに錬金術といえるでしょう。
東京の御徒町は、多種多様の石が集まる場所です。
パワーストーンの仕掛け人たちは、「御徒町に足しげく通い、安価で見栄えのする石を買い求める」と言われています。
希少価値の高い天然石を手に入れるため海外へ出向くよりも、御徒町へ赴く方がよほどお手軽です。
旅費だって浮きます。
なお「パワーストーンは病気に効果的」とアピールすることは、「薬事法に抵触する」というのが厚生労働省の医薬食品局監視指導・麻薬対策課の見解です。
2010年の8月に、アグネス・チャンさんがパワーストーン絡みで、ある騒動を起こしました。
楽天のショッピングサイト『チャンズ』に、パワーストーンのブレスレッドに関する情報を掲載しました。
「ピンクは恋愛運、病気緩和に効く」
という文言を載せたことから炎上騒動に発展しました。
早稲田大学の大槻義彦名誉教授をはじめとする人々から「霊感商法(のやり方)と全く同じ」「薬事法違反なのでは?」という指摘を、受けたのです。
薬事法に抵触する商品を販売したとして謝罪したアグネスさんは、掲載ページから商品を削除しました。
このように病気の治療や治癒に関連させた文言を掲載して、パワーストーンを販売すると厚生労働省から「薬事法違反」と見なされます。
ところで、みなさんはパワーストーンなどのスピリチュアルがどこからきたか、ご存じでしょうか?
ヒントになるのはニューエイジといワードです。
ニューエイジへの理解を深めることで、パワーストーンがなぜ一部の人達にもてはやされ続けているのか知ることができます。
ニューエイジとスピリチュアルの関係
あまり耳慣れないニューエイジという言葉です。
大辞林によると「西洋の価値観や文化を否定し、異質なものとの融和や全体論的なアプローチを重視する思潮」とのことです。
これだけでは漠然としすぎているので、引用を続けると「特に宗教・医学・哲学・占星術など様々な分野で東洋的なものを取り入れようとする動きに代表される」となります。
少しだけ、わかりやすくなったのではないでしょうか?
スピリチュアリズムを掘り下げていくと、必ずニューエイジに行き着くといわれています。
それまでは傍流に過ぎなかったニューエイジが、1970年代になって大きなうねりを生み出す無視できない存在となります。
占星術という言葉が出ましたが、ニューエイジは「魚座から水瓶座への移行」を標榜しておりました。
魚座の時代は、キリスト教が支配する時代。
水瓶座の時代は、新しい時代。
すなわち「New Age」というわけです。
令和になってから、たびたび「地(土)の時代から風の時代に移行していく」という言説を目にしますが、とてもよく似ています。
ちなみに地(土)の時代は、物質中心主義です。
風の時代は、精神中心主義です。
いつの時代も、このような移り変わりがあるというのも興味深い話です。
話をニューエイジに戻しましょう。
ニューエイジは、かなり包括的な文化で端的な定義が難しいという面もあります。
ただし、ゆるやかで組織的ではない分、私達の生活にも自然と入り込んでいるのも事実です。
ここ数年、マインドフルネスがブームになっているのはご存じのとおり。
これらの瞑想も、ニューエイジの一環と捉えられます。
とりわけニューエイジと親和性が高かったのがオカルト、占い、スピリチュアルでした。
1980年代には、オカルト雑誌の『ムー』が創刊されたり、冝保愛子さんが登場したり、『丹波哲郎の大霊界』がベストセラーになりました。
2000年代には江原啓之氏と美輪明宏氏が出演した『オーラの泉』が高視聴率を記録するなど、流れはオカルトからスピリチュアルへと変化しました。
ニューエイジはもともと非科学的な側面が強く、神秘的なもの、霊的なものを含んでいました。
ニューエイジから派生している子宮系と呼ばれる一派があります。
中でも代表格といわれるのが、子宮委員長はるさん。
『子宮委員長はるの子宮委員会』というツッコみどころ満載なタイトルの著書も出ています。
2018年12月20日に、子宮委員長を引退し、八木さやというお名前で活動中です。
セックスを「ふたり宇宙」、オナニーを「ひとり宇宙」という表現に、ただならぬお笑いセンスを感じるのは筆者だけではないはずです(笑)。
まあそれはさておき、話を進めましょう。
八木さやさんは数年前に「子宮にジェムリンガ(パワーストーンの一種)を入れよう!」と、信者に呼びかけました。
子宮系の世界では、完全に教祖様のいらっしゃる八木さやさん。
彼女の呼びかけを素直に聞き入れた信者の女性が、次々と子宮にパワーストーンを差し入れたといいます。
「え、それって単なるオ〇ニーじゃ…」と、呟いてしまったそこのあなた。
お気持ちお察しいたします。
笑ってはいけません。
でも彼女達は、大真面目なのです。
ちなみにこのムーブメントを看過できなかった人物がいます。
高須クリニックの高須克弥さん。高須院長は「腹膜炎起こすぞ!すぐにやめなさい」と、ツイッター上で愛あるツッコミをプレゼント!
高須院長からすると「あそこにパワーストーンをツッコむ行為」がボケにしか映らず、思わずツイッターでツッコんでしまったのかもしれません。
なお「救い」がキリスト教的な考えであるのに対して、「癒し」がニューエイジ的な思想となります。
さて「癒しを望む人」ってどんな人でしょう?
もちろん、自身が不運だと信じている人(自己肯定感が低い人)、生活に疲弊している人、人生に充実感を覚えていない人ですよね?
癒しを待ち望む人ほど、搾取的な商売をしかける人間からすると、格好のターゲットはいません。
いきなり「あなたを癒しますので、10万円お支払いください」「あなたの運気を上げますので、10万円お支払いください」と告げられたらどうでしょう?
多くの人がストレートすぎる物言いに、どん引きしてしまうはずです。
だから仕掛ける側の人間は、煌びやかな石を巧みに組み合わせて「あなたの人生の苦しみがこのパワーストーンで解消されます」といったアプローチを仕掛けるのです。
商売のラベルやパッケージを変えて新鮮味を付け加えるというのは、詐欺師の常套手段です。
世の中には「スピリチュアルで美肌になりましょう!」みたいな、ギャグとしか思えないビジネスをしている人達が、実はたくさんいるのです。
実はパワーストーンの購入で金運がダウンする理由
パワーストーンのチラシや広告などを見ていると「パワーストーンで金運アップ!」などの煽り文句をよく目にします。
実は、まるで正反対。パワーストーンを買えば、あなたの金運はだだ下がりです。
さて突然ですが、ここで算数の文章題!
「太郎君は財布に千円を入れてお買い物に出掛けました。太郎君は、近所のスーパーで100円の林檎を8つ買いました。他には何も買わず帰りました。今、太郎君の財布にはいくら残っているでしょう?」
答えは200円。
問題を変えます。
「愛さんは、財布に10万円を入れてお買い物に出掛けました。愛さんは、出先のお店で8万円のパワーストーンを買いました。他には何も買わず帰りました。今、愛さんの財布にはいくら残っているでしょう?」
答えは2万円。
では「愛さんは出掛ける前と、買い物をした後では、どちらがお金持ちでしょう?」
答えは、もちろん「出掛ける前」ですよね?
これは、いわばものすごく単純な話です。
お金は使えば使うほど、減っていくものです。
つまりパワーストーンを購入することで、お金は失われるため金運も下がるということになるのです。
パワーストーンの原価はかなり安いものが多く、前記した通り御徒町に行けばリーズナブルな石がたくさん手に入ります。
Amazonで販売されているパワーストーンを確認してもらうとわかりますが、10万円以上するパワーストーンもザラに売られています。
もしあなたが金運をアップさせたいのなら、間違ってもこのような高額パワーストーンに手を出さないことです。
購入後も「浄化メンテナンス」などの、それっぽい理由をつけられ、さらにお金を要求することも少なくありません。
パワーストーンを付けていると詐欺師やマルチ商法の人から狙われる
パワーストーンを付けていることのデメリットは数多く存在します。
パワーストーンをつけて人目に触れる場所を歩くのは、女性が「フリーおっぱい」の看板を掲げて全裸でスラム街を歩くのと同じです。
それくらい危険なのです。
カモネギ以上にカモネギなのです(笑)。
カルト宗教やマルチセミナーなどの勧誘をしている人間は、落としやすいそうな人、口説きやすそうな人がどこかにいてないか隈なくチェックします。
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』では、
東に病気の子供あれば、行って看病してやり、西に疲れた母あれば、行ってその稲の束を負い、南に死にそうな人あれば、行ってこわがらなくてもいいといい
雨ニモマケズ
となりますが、
これを「詐欺師フューチャリング力石バージョン」に変換すると
「東に病気の子供あれば、行ってパワーストーンを販売し、西に疲れた母あれば、行ってパワーストーンを販売し、南に死にそうな人あれば、行ってパワーストーンを販売する」
となります。
もう、これくらい徹底しています。
パワーストーンをつけることで
- すがる対象が欲しい人
- 依存的で甘えたい願望の持ち主
- 不安を感じやすい人
- スピ系にお金を払いやすい人
というメッセージが全て可視化されると言い切ってもいいでしょう。
悪徳商法に手を染める人間は
- 理想描写
- 理論提供
- 現状把握
- 目標設定
- 支援表明
上記の5ステップで、ターゲットを陥落させるといわれています。
パワーストーンを付けているということは、話さずしてある程度「対象者の現状を把握できる」ということです。
つまりアドバンテージがあるのです。
クロージングを仕掛けてくる方は、パワーストーンをしている人を相手にすると、最初から有利に交渉を進めやすいのは間違いありません。
ちなみに堀江貴文さんは
と断言しています。
もちろん、彼は「パワーストーンをしている人とコミュニケーションをとらない」というスタンスです。
堀江さんのように「パワーストーンをつけている輩とは、絶対に付き合わねえ!」というポリシーの人が一定数いることを覚えておきましょう。
パワーストーンは百害あって一利なし
パワーストーンを付けるとメリットはなく、デメリットしかないことをおわかりいただけたのではないでしょうか?
最後に余談ですが、筆者の中学生時代、Jリーグ元年だったこともあり、同級生男子は猫も杓子もミサンガをしていました。
「ミサンガが切れたら願いが叶う」と言われており、「早く切れないかな~」と願っていたら、ついに受験勉強真っ最中だった中3の冬にブチンと切れたのです。
「よっしゃ~これで念願の高校に合格!」と、テンションは上がりましたが、結果はといえば不合格…。
「しっかり切れたのに、なんで!?」と、嘆いた記憶がありますが、後の祭りです。
残されたのは報わぬ思いと、汚れ切ったミサンガだけでした…。
ミサンガもパワーストーンも原理は同じです。
全く科学的根拠はありません。
あるのは付けている人の思い込みと、儲けたい人間の悪だくみのみです。
もしあなたが金運を高めたいのであれば、散財せずにしっかり貯蓄することを推奨します。
パワーストーンなどに手を出さず「石の上にも三年」という気持ちで貯金に臨めば、あなたの金運は自然に上がるでしょう。