様々ある架空請求詐欺の中で、とりわけ大きな被害額が出ることがよくあるア〇ルト系詐欺です。
2020年には1億円を超える被害金額が発生した事件も報道されました。
ア〇ルト系詐欺はかなり昔からあり、人間に性的な欲求も絡んでいるため令和になろうが、これからもずっとあり続けるはずです。
だからこそ我々は、詐欺を仕掛ける側がどのようなアプローチをするのかを、しっかり理解しておく必要があります。
目次
超情報化社会と関係が深い架空請求詐欺
架空請求詐欺とは、契約した覚えがない企業や会社からの請求や、まるで身に覚えのない請求に関連した詐欺などを指した言葉です。
令和の現代は超情報化社会です。
「現代人が一日に受け取る情報の総量は、江戸時代に生きていた日本人のおよそ一年分」という説があるほど、我々は夥しい情報の渦の中で暮らしています。
詐欺師や詐欺業者は、虚をつく術を心得ています。
大量の情報に晒されて生きている現代人は、心当たりのない請求をされたとしても「もしかしたら、あの時に見たものの請求では…!?」と、ついつい思ってしまうものです。
また何に対しても正面から向き合おうというスタンスで生きている人間であれば、「自分がとった行動の責任は自分でとらないと…」と真面目に捉えてしまい、請求された金額をきっちり支払うこともあるでしょう。
ア〇ルト系の媒体が詐欺に用いられやすい理由
詐欺師ほど、人間心理を奥底まで熟知している人種はいません。
人の心のメカニズムを理解して、プラスの方向へ役立てればみんなハッピーになれるのですが、詐欺師はその真逆です。
私利私欲のためのみに、人の心がどういう状況のときにどんな反応をするのかを徹底的に研究を重ねます。
「私益を得るために、人間心理と人間行動学を学ぶ」といっても過言ではありません。
そもそも、なぜア〇ルト系の詐欺が、昭和、平成、昭和と時代を経ても一向になくならないのでしょう?
主な理由として
- 人間の三大欲求の一種である性欲を利用している
- ア〇ルト系の話自体を他者にしづらく恥じらいを覚える
というものが挙げられます。
人間の三大欲求といえば、食欲、睡眠欲、性欲です。
生物として備わっているこれらの欲求をなくすことは基本的にできません。
ハニートラップなどの例を挙げてもわかるとおり、性的なものを利用した仕掛けはターゲットの反応を誘発しやすいのでしょう。
悪だくみの青写真どおりに、人間の行動をコントロールするのは容易になります。
続いて、もうひとつの理由である「恥ずかしさの利用」についてもお伝えしましょう。
日本人はとりわけ「恥の概念」が強い民族といわれています。
欧米がキリスト教を基盤とした「罪の文化」であれば、日本人は周囲からどう見られるのかを過度に意識する「恥の文化」なのです。
村社会の名残である「村八分」という言葉が未だ現存しているように、世間にどんな印象を与えているかには極めて過敏です。
ア〇ルト系架空請求詐欺の被害は、ア〇ルトサイトを見た人のみがターゲットなわけではありません。
身に覚えのないメールが届き、いきなり請求されることもあります。
生真面目な人であれば、そういったメールが届くこと自体に恥じらいを覚えるかもしれません。
詐欺師はターゲットの孤立をもくろむ
詐欺師の視点に立てば、ターゲットが孤立して正常な判断ができなくなるほど「しめたもの」と考えています。
友人、知人に「こんな業者からお金を請求されているんだけど?」と相談した結果、「自分のイメージがネガティブなものになる…」と考えれば、相談自体をためらう人もいるでしょう。
また日本人は「他人に迷惑をかけてはいけません」という教育を、幼少期より親から受けている人が少なくありません。
何かと「自己都合で相手に負担を掛けるのをできるだけ避けたい」と思いがちになります。
こうした他者を配慮する気持ち自体は素晴らしいことは否定しません。
ただし、どんなことでも気軽に相談できる友人、知人、家族が周囲にたくさんいる人ほど騙されづらいものです。
世間体を気にしやすく恥ずかしがり屋の多い日本人だからこそ、ア〇ルト系架空請求詐欺がはびこりやすいといえます。
ア〇ルトサイトの架空請求は不意打ち来る
よく報告されているものが「無料だと思ってア〇ルトサイトを楽しんでいたら、いきなりお金を請求された」というものです。
詐欺師は「ショックを与えることで、ターゲットがパニックになりIQが下がる」という心理的作用を理解しています。
想像してみてください。
仕事を終えて缶ビールを飲みつつ飯を食い「さあ、ちょっとムフフなサイトでも見るか~」と、リラックス状態になっていたら、突然、画面に「契約を締結しました」という文字が表示されるのです。
緩和から緊張へ一転します。
「やばいっ!早く払わないと!!」となる人も恐らくいるはずです。
ア〇ルトの架空請求詐欺は、ア〇ルトサイトを一切見てない人にもメールなどで一方的に送り付けてくることだって少なくありません。
つまり、誰もが騙される可能性があり、油断大敵なのです。
ア〇ルト系架空請求詐欺でよく使われる文言
詐欺業者が使う言葉や文言には共通点があります。
よく使われるものは
- ご入会が完了しましたので、3日以内にご利用料金のお振込みをお願いいたします
- 会員IDを発行しました。ご自宅に登録証明書を郵送いたします
- お客様のプロバイダ情報を完全保存しました
- お客様の端末情報を完全保存しました
- 申請のあるなしに関わらず、ご精算いただきます
- お支払いの確認が取れない場合、債権管理部がご自宅に直接伺います
- 間違ってご登録された場合は、電話もしくはメールで退会申請してください
上記のものとなります。
他の詐欺サイトに掲載されている文言をコピー&ペーストしてそのまま使う業者もあるので、同じ文言が使われていないかチェックし、詐欺を見破る判断材料にしましょう。
無料ア〇ルトサイトはフロントエンド商品
やり手の詐欺師ほど、ビジネスの構造を自ら仕掛ける詐欺に落とし込むことが得意です。
商品には
- フロントエンド
- バックエンド
の2種類があります。
フロントエンド商品とは、集客用のものです。
フロントエンド商品自体では、収益をもともと見込んでおらず、いわば撒き餌のような意味を持ちます。
バックエンドは本命商品です。
こちらへ誘導する為に逆算して、フロントエンド商品を設計します。
昼夜営業をしている飲食店に例えると、ランチタイムに出すリーズナブルな商品がフロントエンドで、夜に提供する高めの商品がバックエンドとなります。
もうおわかりかと思いますが「無料でムフフな動画が見られまっせ♪」と打ち出しているサイトはフロントエンド的なものになります。
バックエンドは、その後、送り付けてくる架空請求です。
昔から「タダほど高いものはない」とよく耳にしますが、これはかなり本質をついた言葉です。
1億円900万円の被害金額が出たケースも…
2020年10月ア〇ルト系架空請求詐欺で、甚大な被害金額が詐取された事件が発生しました。
札幌市西区在住の50代男性が、1億円を超えるお金を搾取されたというのです。
2020年10月14日に、男性の携帯へ「利用料金の確認がとれていないものがあります」といった旨のメールが届きました。
彼が指定された番号に電話をしてみると、「ア〇ルトサイトの未納料金があります」と伝えられたのです。
その後、警察を装った詐欺師から「損害賠償の補償金が必要」「サイバー保険料を支払ってもらいたい」という理由で金銭を要求されます。
2020年10月から2020年12月10日までの期間、詐欺業者から言われたとおり複数回に渡って男性は振り込み続け、何とその総額は1億900万円にも上りました。
こちらの事例のように多くの詐欺は、単独では行わず複数名が結託して進めるのがほとんどです。
掛け子と称される電話担当者が最初にターゲットと会話して、その後、警察や銀行員などの振りをした別の人間から詳しい話を聞かされる、そんなパターンが非常に多いのです。
未成年が騙される事例も
ア〇ルト系の架空請求詐欺の被害者は、成人だけに限っているわけではありません。
若い世代になるほど、スマホを操作する時間が総体的に長くなる傾向にあります。
相談内容がア〇ルト系なだけに、親へ助言を求められず、支払う必要がないお金を振り込んでしまうこともあるでしょう。
『Yahoo知恵袋』をはじめとする相談系サイトにも、「ア〇ルトサイトからお金を請求されていて、支払うべきかを悩んでいる」といったお悩み相談がたくさん寄せられています。
社会経験が乏しい未成年者ほど、何が詐欺で何が詐欺でないかといった線引きがしづらいものです。
成熟していない人間を見つけると、「よっしゃ、カモ発見!騙せるぞ」とテンションを上げるのが詐欺師という生き物です。
詐欺師達は、「騙せる人間がいれば、騙せるだけ騙してやろう!」と考えるものなので、未成年者相手であろうが容赦しません。
スマホを手放さず騙しやすいという点では、未成年者もア〇ルト系架空請求詐欺の格好のターゲットといえるでしょう。
ア〇ルト系の架空請求詐欺被害を避けるためにできること
ア〇ルト系の架空請求詐欺被害を回避するためにできることは、以下となります。
- 業者からのアプローチがっても完全に無視
- あまりに架空請求のメールが多い場合は、アドレス自体を変更
- ウイルス対策をしっかりする
- 迷惑メールの受信拒否設定をしておく
- 怪しいサイトにはアクセスしない
- 怪しいアプリのダウンロードをしない
- こちらから連絡するなど、詐欺業者に自身の情報を与える行動を回避
- ひとりで悩んだり判断したりせず、信頼できる人に確認してもらったり、相談窓口を利用する
最もやってはいけないのが、パニック状態に陥りIQが下がった状態でのアクションです。
どれだけクレバーな人間でも、慌てふためいているような状況になると、正常な判断を下すことは不可能でしょう。
多くの詐欺師は、ターゲットの不安を煽って、冷静な対応をできない状態へ追い込んでいくものです。
「自分は慌てやすい」といった自覚がある人は、前もって詐欺業者が仕掛けてくるアプローチ方法インプットし備えておくだけで、パニックに陥りづらくなります。
消費者を守る法律「電子消費者契約法3条」とは?
ア〇ルト系の詐欺では、しばしば「契約が成立しました!」といった一方的な文言を送り付けてきて、ユーザーの不安や恐怖を煽ります。
しかし、法的な観点で述べるなら、そもそも錯誤しやすいような表示など、つっこまれる要素があるサイトを設けている側の方にこそ非があるのは間違いありません。
ワンクリック詐欺などへの対策として、電子消費者契約法の存在を知っておくことで心強い後ろ盾になります。
弁護士など、法律に精通している職種に従事している人でなければ、どのような法律が消費者の味方をしてくれるなど、わかりづらいものです。
今回は、電子消費者契約法3条について解説します。
電子消費者契約法3条の法律文を引用しましょう。
一消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。
電子消費者契約法3条
これだけ読んでも「う~ん、よくわからん…」と、首をひねった人が多かったかもしれません。
「電子計算機」という言葉が二度に渡り使われていますが、これは電卓ではなくパソコンを表す意味で使用されています。
もしあなたが「欲しくもないのについクリックしちゃった…」となっても「操作ミスなので、やっぱり無効にして下さい」と主張できるということなのです。
民法の原則によると、消費者による軽い過失であれば取引の無効が主張できて、重い過失に該当する場合、取引の無効の主張は難しくなるでしょう。
しかし、何が軽い過失で何が重い過失として法的に解釈されるなど、我々一般市民にわかるわけがありません。
というわけで「インターネットを通じた取引で起きた錯誤を主張できる法改正をしよう」という観点から、電子消費者契約法3条が作られました。
もちろん架空請求詐欺は、お金を搾取しようとする詐欺側に非があるものです。
まかり間違ってクリックしてしまい、請求されたとしても「錯誤するようなサイト設計をした方にも問題があると、民放で定められている」ということを知っておけば慌てずに済むでしょう。
そもそも有料サービスの契約を締結するには、「有料の申込みになる」という趣旨をしっかりとユーザーに知らせるための、広告表示義務を果たさなければなりません。
そういった義務を無視している時点で、正当な取引ではならないのは明らかです。
ユーザー側が罪の意識を覚える必要は全くないのです。
まとめ
対応を間違えれば1億円以上の大金すら失いかねない、ア〇ルト系の架空請求詐欺。
スマホやタブレット、インターネットなどに関して独自の市場調査を行っている『MMD研究所』の調べるよると、
スマホの使用時間は
- 2時間以上3時間未満fa-long-arrow-right24.1%
- 3時間以上4時間未満fa-long-arrow-right18.5%
という結果が出ています。
つまり全日本人の4割以上が、2時間~4時間未満もの間、毎日スマホ操作に費やしているというわけです。
これだけの時間、スマホに触れているのであれば、いつ何時ア〇ルト系の架空請求詐欺に遭遇してもおかしくありません。
あなたも可能な限りトラストリテラシーを高めて、詐欺師や詐欺業者の仕掛ける罠をいち早く看破できようになっていただけると嬉しいです。