有名な詐欺は「オレオレ詐欺」のように、わかりやすい名前がつくものも少なくありません。
今回は金策に走り回る人ほど、狙われやすい融資保証金詐欺の実態について解説します。
目次
振り込め詐欺の6割を占める融資保証金詐欺
秋田県警察の調べによると、融資保証金詐欺が振り込み詐欺全体の中で占める割合は実に6割です。
他府県ではこの割合が変わるものの、振り込み詐欺の中で融資保証金詐欺が多いのは確かです。
「当△△社の名前をかたる悪質な業者にご注意を」「悪質な手口にご注意!」といった文言を掲載することで、「自分達は詐欺師ではありません」と、矛先を逸らす小細工を仕掛けてくる業者もある為、油断ができません。
これは政治家などもよく用いる手法ですが、誰かを叩くことによって自分の正当性を暗に示すテクニックです。
詐欺業者はあらゆる手練手管であなたを騙そうとします。
秋田県で融資保証金詐欺が特殊詐欺の中で6割も占めたのは、それだけ騙し方のバリエーションが豊富だからでしょう。
融資保証金詐欺の手口
融資保証金詐欺がどのような内容のものかを解説していきましょう。
融資保証金詐欺は振り込め詐欺の一種です。
「融資しましょうか?」と持ち掛けて、現金を振り込ませる詐欺です。
「登録料が必要です」「最初に保証金がいります」など、色々と理由をつけてお金を要求します。
借りた側は「融資してもらえる」と信じ込んでいるため、相手が、突然姿をくらました後「これが貸します詐欺なの!?」とようやく理解します。
騙されたことを認識してから大きなショックを受けるのです。
「どうしてそんな詐欺に騙されるんだろう?」と思う人も多いでしょう。
融資保証金詐欺を仕掛ける詐欺師は、何を言えば相手が飛びついてくるかを研究しています。
空腹状態、飢餓状態のライオンの眼前に肉をポイっと投げれば、かなりの確率で食いつくはずです。
人間相手でも同じようなことを容易にやってのけるのが、熟練詐欺師達です。
下記で詳しく説明しますが、融資保証金詐欺を仕掛ける側の人間は、どういった状況の人間に何を伝えれば反応するかをわかっています。
それだけ心理誘導が巧妙なのです。
過去にあった融資保証金詐欺の犯罪事例
融資保証金詐欺がどのようなところから始まり、どういう被害が出るのか過去の事例をもとに解説していきましょう。
詐欺の手口を理解しておけば、同じようなアプローチをされたとしても、いち早く気づけるようになります。
全国で多数の被害があった事例
まずは、最初は数万円という額から始まった融資保証金詐欺の事例を紹介しましょう。
全国にある集合住宅に「100万円まで融資可能。ある時払いの催促なし」「運営は郵便局を退職したシニア層」などと書かれたチラシが投函されました。
興味を持った人が掲載された番号に電話をすると、入会申込書が届きます。
申込書の返送先は私書箱でした。
返金先は女性の名義でした。
その後、担当者から連絡があり
といった説明がありました。
多くの詐欺師は搾取できそうなターゲットを見つけると、複数回に渡ってお金を要求するものです。
2回目以降は限度額が上昇します。
返済を繰り返していると、突然
詐欺師からすると、「かなりの金をせしめたので、そろそろ潮時だ」と考えていたのでしょう。
詐欺師はお金を搾取しながら「どのタイミングで消えようか?」と機会を伺っています。
消え失せる時期が絶妙なため、連絡がつかなくなってから騙されたと気づくケースがほとんどです。
こちらのやり口による被害総額は2億円を超えており、被害者の総数は7,500人です。
かなり大規模に行われた融資保証金詐欺といえますし、後も似たような手口の詐欺が仕掛ける可能性があるでしょう。
50万円の被害金額が出た事例
続いて紹介するのは、50万円の被害金額が出た事例です。
経営者であったある男性は、消費者金融業者が送ってきたチラシに興味を持ち融資を申し込みました。
後日、消費者金融業者から連絡があり男性に
その後、
と続ける業者。
男性は必死にお金をかき集め、指定の口座に50万円を振り込みました。
ところがその後、融資を受けられるどころか
とさらにお金を要求されます。
業者曰く
とのことでしたが、最初の50万円も男性は懸命に集めていたため、追加の50万円をそんなにすぐ用意できるはずもありません。
「融資はもう諦めよう…」と考えた男性は、最初に支払った保証金の返済を求めましたが、業者は
と言ったきりで、その後、一切連絡がつかなくなったのです。
「貸します詐欺」はいつ命名された?
最も有名な特殊詐欺は「オレオレ詐欺」でしょう。
電話口で開口一番「オレオレ」と名乗ることから名づけられた詐欺は、覚えやすく詐欺の周知に一役買った面があります。
ちなみに「オレオレ詐欺」が世に知られるようになったのは、2000年前後ですが、正式の「オレオレ詐欺」という名で報道されるようになったのは、2003年2月の鳥取県警米子署が検挙した事件であるといわれています。
融資保証金詐欺が「貸します詐欺」と命名されたのは2005年の11月1日。
あまりに融資保証金詐欺が増えていたため、まずはそういう手口の詐欺があるのを拡散しようという目的で名づけられたのでしょう。
確かに融資保証金詐欺と聞けば「堅苦しくてよくわからない」となりますが、「貸します詐欺」と聞けば「貸しますよという話を持ち掛けて騙す詐欺なんだな」と理解が進みやすくなります。
無資格者が個人間融資を持ちかけるケースも…
融資をする側は正規のルートで登録しておかなければなりません。
中には無登録にもかかわらず融資を持ち掛ける事例があるというのです。
今はスマホとネット環境さえあれば、誰でもネットを通じて知らない人間といくらでもつながることが可能です。
ネット時代は、詐欺師からすると非常にチャンスの多い時代といえるでしょう。
最も卑劣なものになると、融資と引き換えにお金ではなく性的画像を送るよう要求するケースも……。
背に腹は代えられぬと撮影した写真を送ってしまうと、それをもとに呼び出されて関係を迫られたり、お金を求められることもあるのです。
詐欺師に良心など皆無ですから、つけ入る隙があれば遠慮容赦なく突いてきますし、強請れる材料を見つけたら、ハイエナのような嗅覚で迅速に相手の弱味を利用するものです。
要求に負けて、たった一枚送ってしまった写真から、どんどん被害が膨らんでいくことも考えられます。
詐欺師が求めてくるものは何も金銭だけに限りません。
融資保証金詐欺の業者がよく使う言葉
今は詐欺師達もテンプレに頼るようになっています。
情報化社会だけあって、スマホ一台あれば、それっぽい言葉を並べられるようになりました。
詐欺師が使う言い回しや表現を頭に入れておくだけで、騙される確率を下げられます。
- 即日融資実行!
- 融資前に保証金が必要です
- 誰でも借りられます
- ブラックでも大丈夫
- 審査なしで融資可能です
- 年利3%の低金利
- 90日間無利息
- 返済は余裕のある時でOK
上記のような文言を目にしたら、融資保証金詐欺の可能性を疑った方がいいでしょう。
詐欺師の言葉は決まって、耳障りが良かったり、損得に関するアプローチを含んでいるものです。
つい感情が動くような言葉を意図的に選んで使っています。
借金返済で余裕がない人がターゲットに
詐欺に遭いやすい人、遭いづらい人を二分する大きな要素は、余裕のあるなしです。
どんな人間でも切羽詰まれば、正常な判断をしづらくなります。
とりわけ大きな借金を背負ってしまった人は、常々脳内で「借金をどう返済しよう」と考えがちになります。
融資保証金詐欺を仕掛ける人間は、そういった人達をターゲットにします。
狙われやすいのが多重債務者です。
何らかの原因によって、債務を負ってしまった人に、詐欺師や詐欺業者が甘言を囁くことも珍しくありません。
ずっと「借金があって苦しい…」と思いながら生活している人ほど、渡りに船な言葉を掛けられると騙されやすいでしょう。
辛い思いをしている時ほど、人を良く吟味して信頼に値する人間かどうかを見極めることが求められます。
「詐欺師は笑顔の仮面をつけて近寄る」という言葉がありますが、これは正鵠を射ています。
もし、あなたが多重債務者ならば、上記で紹介した言葉をかけてきたり、そういったワードが掲載されているサイトを見かけたら警戒しましょう。
闇金業者が債務者を狙うことも少なくない
経営者が頭を悩ませる資金繰りです。
特に新型コロナウイルスが蔓延するような激動の時代には、資金繰りが上手く行かず「会社を畳むべきか?」などの決断を迫られる人も多いでしょう。
自転車操業状態で経営を続けていると、キャッシュフローが思い描いたようにいかなくなり、債務者になってしまうケースも目立ちます。
多重債務者や中小企業経営者等のデータがどこかから流出し、闇金業者の手に渡ることがあります。
「融資いたします!」といった内容のハガキやDM、ファックス等を送ることで、アプローチしてくる業者も少なくありません。
「低利での融資が可能」と目立つ広告を出して、債務に悩んでいる消費者、経営者などを狙い撃ちします。
藁をも掴む思いでやってきた債務者に
と厳しい声を掛けた後にさらなる仕掛けが……。
と問題点を巧みにスライドさせて、保証金を得る名目でお金を搾取しようとするトラップです。
闇金業者から指定された口座に、お金を振り込んだ後、「しまった!これは詐欺だったのか!!」と気づいても後の祭りです。
融資保険金詐欺などは、一度、入金が完了してしまうと、お金を取り戻すのが非常に困難です。
詐欺被害に遭遇する前の段階で詐欺に気づき、回避するのがベストの選択といえるでしょう。
詐欺被害回避にできること
融資保険金詐欺の被害に遭わないためには
- どれだけ切羽詰まってもすぐに飛びつかない
- 少しでも怪しい点があれば誰かに相談する
- 融資を前提とした現金振り込みの話が出た時点で疑う(正規の貸金業者が行わない行為のため)
- 「先に保証のお金を支払ってほしい」と言われたら疑う
上記となります。
視野が狭くなり余裕をなくすほど、詐欺師の心理操作にはまるものです。
「こんな良い案件を自分だけ聞けてラッキー!」と思うのではなく「こんな良い案件が、なぜ自分にだけ回ってくるのか?」と冷静に考えられる視点を持ちましょう。
また前記したように、他の詐欺業者を攻撃している振りをしながら、自らを正当化しようとする詐欺サイトもあります。
「どこか怪しい点はないか?」と、楊枝で重箱の隅をほじくるようなスタンスでちょうどいいのです。
融資保証金詐欺のことはどこに連絡すればいい?
警視庁が「架空請求詐欺」「融資保証金詐欺」の情報提供を呼び掛けています。
特に緊急性が高いものは下記のURLにアクセスし、ページ下部にあるフォームに情報を入力して送信しましょう。
fa-external-linkhttps://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anket/sagi_info.html
送信する際に、入力が必須になる情報は
- 東京都内における架空請求・融資保証金詐欺の情報提供
- 他道府県における架空請求・融資保証金詐欺の情報提供
上記のどちらに該当するのか?
送信しようとしている情報が、
- 電話やハガキなど、メール以外の特殊詐欺に関する情報提供
- 送信者自身が当事者となっている架空請求・融資保証金詐欺に関するもの
- 上記以外の緊急性のない架空請求・融資保証金詐欺の情報提供
のどれに該当するのか?
あとは
- 名前
- 住所
- 電話番号
- 1,000文字以内の概要
となります。
電話で連絡をとりたい人は、
電話:03-3581-4321(警視庁代表)
までかけてくださいね。
まとめ
融資保証金詐欺について解説しました。
「好条件で融資が受けられる!」となれば、気分が高揚するのもわかります。
ただし、融資先が本当に信頼できる対象なのかは、時間をかけてゆっくり見定めた方がいいでしょう。
詐欺の多くは間(ま)がないことで発生しています。
少しでも考える時間を作り「もう少し慎重になってみよう」とさえ思えれば、騙される確率はおのずと下げられるはずです。
あなたも詐欺に関する知識を増やすとともに、トラストリテラシーを高めて被害に遭遇しないようにしてくださいね。