fa-arrow-circle-right図解でわかる!闇バイト!出し子
不況が続いたり、仕事にあぶれた人間が増えると、闇バイトに手を出す人が溢れます。
軽い気持ちで手を出してしまいがちな、出し子という犯罪です。
ネットのインフラが整ったこともあり、知らないまま悪意なく出し子募集に応募してしまう人達が増加しています。
今回は出し子募集について、詳しく解説していきましょう。
目次
出し子って何?
出し子は受け子とセットで語られることが多い隠語です。
特殊詐欺のニュースでは、出し子や受け子という言葉をよく耳にします。
出し子は、振り込め詐欺などの特殊詐欺で犯罪に利用された預金口座から、現金を引く出す担当者の呼称です。
ATMへ足を運びお金を下ろす役割を担います。
受け子は、直接現金を受け取る担当者の呼び名です。
ちなみに掛け子は、オレオレ詐欺などで電話をかけ言葉巧みに騙す役の人のことです。
特殊詐欺はピラミッド構造になっており、出し子と受け子は最も下位の階層となります。
全体を取り仕切るリーダー詐欺師と出し子や受け子は面識すらない場合がほとんどです。
もし、出し子や受け子が逮捕されても、主犯格の詐欺師は屁とも思っておりません。
出し子や受け子の逮捕は実質、とかげの尻尾切りに過ぎないのです。
全てを統括する主犯格の詐欺師は大変クレバーであることが多く、しっかりとリスクヘッジを考慮しています。
自分がヤバい犯罪に関わっている自覚があるため、己の身を守る意識がかなり高めです。
反対に下位に位置する出し子、受け子ほど、どれほどリスクが高いことに関与しているか理解していないことが大半なのです。
詐欺師の世界でも、思考する機会が多く社会について知悉している人間が儲けるようにできています。
コロナ不況で出し子、受け子などの闇バイトが急増中?
2020年から大流行した新型コロナウイルスの影響によって、職を失った人は少なくありません。
特にインバウンドに関わる旅行産業、観光産業へのダメージがとりわけ大きかったことは想像に難くないでしょう。
2021年の春以降は、主要都市ではアルコールを外で飲むことすら許されず、堀江貴文さんが「禁酒法が現代にやってきた!」との呟きにたくさんの共感が寄せられました。
飲食業界もまた苦境にあえいでいます。
昨年のデータを振り返ってみましょう。
厚生労働省と総務省が出した統計によれば、2020年の完全失業者は191万人。
2019年と比べて29万人の増加となりました。
新型コロナウイルスによる初めての緊急事態宣言が出た2020年4月の休業者数は597万人です。
こうして数字を確認すると、かなりたくさんの人達が失職したり、一時的に働けない状態になったことがわかります。
Uber Eats(ウーバーイーツ)をはじめとする、即金性のある仕事でなんとかやりくりしている人もきっと多かったでしょう。
経済的に追い込まれる人が増えると、比例して舌なめずりする者が増えるものです。
人を騙すことを稼業としている犯罪者達が、悪だくみを始めるのです。
「家賃が払えない」「食費がなくなった」など、かなり切迫した状態に陥った人は、「多少のグレーゾーンでも稼げるなら問題ないかも?」と、ついつい考えがちです。
もちろん全員ではないものの、悠長なことが言えない事態が続けば、手段を選ばない人が増えるのも確かでしょう。
社会性がまだ身についていない若者がターゲットにされるケースが後を絶ちません。
大学生や未成年の人達が、出し子になってしまうこともよくあります。
詐欺師の甘言に騙されることなかれ
詐欺師が協力者を募る際「詐欺を手伝ってくれる人を募集しています!」なんて、ストレートな謳い文句はもちろん使いません。
「手軽に稼げて高単価!」「短期高収入!」などの、文言につられて募集をして、蓋を開けてみると「詐欺の片棒を担ぐ業務だった……」とショックを受けるのもよくあるケースです。
特殊詐欺の中で最も低いポジションの出し子達は捨て駒
特殊詐欺は、複数人いて成り立つものです。
- 首謀者
- 番頭
- かけ子
- 受け子・出し子
詐欺の全体図を描く首謀者は、基本的に一名のみです。
番頭は数名、かけ子は番頭よりも多くなり、出し子と受け子は最も下のポジションになるため、「かなりの数が存在している」といわれています。
首謀者は、反社会的勢力の人間であることも珍しくありません。
人を騙すことに対して罪悪感を抱かない人種が、まず最初に青写真を描きます。
そこへ金銭を目的とした詐欺仲間が集うという流れになります。
全体の仕切りを任されている番頭が、掛け子、受け子、出し子に指示を出すこともあれば、掛け子が受け子、出し子に命令を下すなど、様々なケースが見受けられます。
機転が効いたり、頭の回転の早い掛け子は、番頭などの参謀的ポジションを請け負うこともあるようです。
出し子は容易に交換することが可能なため、首謀者は「警察にパクられてば、また別の奴をバイトで雇うだけ」と考えています。
犯罪に手を染めてしまう人間をかばうことは決してできません。
ただし、軽い考えで出し子などを請け負ってしまう人間もまた、別の詐欺師に騙されているという見方ができるでしょう。
出し子は何で募集されることが多い?
コロナ禍の犯罪は対人コミュニケーションが激減した分、ネットを通じて行われるものが急増しました。
出し子募集で多いのが、SNSを利用したものです。
そして友人、知人からの勧誘です。
各々について解説していきましょう。
SNSの出し子募集
とりわけ多いのがTwitterです。
ダーティーな仕事は、ハッシュタグをつけて募集をかけられることも少なくありません。
#闇バイト
#裏バイト
#高額バイト
など、内容をぼやかしているものも多く散見されます。
#受け
#出し
というものも存在します。
もちろん「#受け」は受け子のこと、「#出し」は出し子のことを意味しています。
双方の言葉をミックスさせた
#受け出し
#出し受け
などもあります。
闇サイトで詐欺師の協力者を集っているかと思いきや、一般の人が普通に使っているSNSでもさらりと募集がかけられているのは「恐ろしい……」の一言です。
SNSに問題があるというよりは、犯罪に利用する人間に問題があると見るべきでしょう。
包丁を料理に使う人もいれば、刃傷沙汰を起こす事件に用いる人もいるのと同じです。
つまり使う側のモラルが問われるのです。
友人や知人からの勧誘
見ず知らずの人間から誘いを受けても、ほとんどの人は疑ってかかるでしょう。
しかし、昔からの友人や知人であれば、「この人が言うなら信頼できるかもしれない」と考える節があります。
詐欺師が一般の人を騙したり、仲間に誘い込むためのファーストステップとして、まず信頼を勝ち得なければなりません。
友人や知人というのは、この第一段階を既にクリアしています。
中には信頼させるために高いお店で奢り「なんで急に羽振りよくなったの!?」と質問するよう誘導する人もいます。
詐欺師側はもちろん答えを用意しています。
「リスクなしに短時間で、たんまり稼げる仕事を見つけたからさ」と回答します。
この時点で、誘った側は誘われた側をあがめてしまい「自分も同じように儲けたい」と思うことだってあるでしょう。
「甘い話にはトゲがある」といわれますが、まさにこれは正鵠を射ています。
出し子募集なども、一見すると「手軽に稼げそう!」と思えるかもしれませんが、一度でも手を染めてしまうとあなたの人生に大きな影を落としかねません。
往々にして詐欺師は甘言で、弱っている人の心をグラグラと揺さぶってくるものです。
「一回の出し子体験で、取り返しのつかない事態にまで発展してしまった」と後悔する前に、「そうそう美味しい話などない」と心得ておくことが肝要です。
また少しでも怪しいと感じたら、すぐに自己判断をすることなく、信頼できる人に相談するようにしましょう。
実際よりも多い収入で出し子は理性を狂わせる
出し子募集とは知らずに、関わることになった人の多くが最初の段階で
と、やばい予感を抱いています。
実はこの段階が大きな分かれ道です。
途中で合法な道へと引き返せればいいのですが、
となれば、犯罪者路線まっしぐら!
他人のキャッシュカードを使いATMからお金を引き出す『出し子業務』を遂行すると、報酬を手にできます。
詐欺師だからといって、金払いが悪いということはありません。
むしろ最初に心を掴みたいという意図で、かなり多額のお金をあえて出し子に渡す詐欺師もいます。
一度でも出し子体験をした人間は、もう普通の仕事には戻れなくなるケースが多いのです。
例えば、これまで時給千円~二千円ほどの金額で働いたことしかなかった人間が、少しの労力で十万円を手にしたらどうなるでしょう?
お金の快楽をあなどってはいけません。
と認識した途端、脳内にものすごい量の快楽物質が分泌され、とっろとろの状態になります。
詐欺師はお金による快楽の与え方を熟知しているため、意図的にこういった仕掛けをしているのです。
理性がなくなれば、あとは犯罪者街道をひた走るようになることを、過去の詐欺経験から知り尽くしているのでしょう。
やり手の詐欺師ほど心理操作が得意
やり手の詐欺師ほど、人間心理の機微まで理解していますし、人心掌握にも長けているものです。
出し子に対し最初に大金を掴ませておいて、その後はだんだんと報酬を減らしていくパターンもあるといわれています。
しかし、一度でも詐欺グループに協力してしまえば、簡単に抜けられるものではありません。
高を括ったがゆえ、ドツボにはまる人間がいるのです。
詐欺師の親玉が、ターゲットにしているのは被害者ではありません。
出し子、受け子という下位の立場にいる人間もまた、骨の髄までしゃぶりつくすのです。
安全じゃないことほど安全を連呼する法則
これまで経験したことがない仕事を始める際に、まず気になるのが安全性でしょう。
詐欺師グループに引き入れたい人間は、しきりに
と、業務の安全性を強調します。
安全、安全と連呼するというのは、うしろめたさを感じているがゆえの行動と解釈することが可能です。
もしあなたがことさら安全について滔々と語られたり、
と言われたら、その時点で相手にやましさがあることを感じ取るべきです。
本当に安全な仕事の場合、そこまで安全についてアピールしないものなのです。
身分証明書をとられ、辞めるに辞められなくなるケースも!
出し子募集に応募する人達が、最初から犯罪者であったり極悪人であるかといえば、そんなことはありません。
むしろ我々と何ら変わらない人が、犯罪に手を染めて
となることの方が多いのです。
なぜ、全うな暮らしに戻れなくなるのでしょうか?
それは出し子を募集している側の詐欺師達が、出し子や受け子をする人間の身分証を人質にするからです。
と言い出した途端
と脅迫され愕然とすることも。
ネットで開示された情報はずっと残り続ける可能性が高く、出し子を人間からすると致命傷ともいえるでしょう。
また、特殊詐欺を仕切る人間は、反社勢力などが多いことから恫喝で出し子を辞めさせないようコントロールすることもあります。
それまで丁寧に応対していたのにもかかわらず「辞めたい」と一言口にしただけで、たちまち豹変します。
とドスの効いた凶暴な口調で有無を言わさず撤回させるような輩も……。
そして忘れてはいけないことがあります。
前科者になると世間の目は、大変厳しくなるのです。
現代は情報化社会ですから、前科があるという噂もすぐに拡散されます。
刑期を終えて出所しても、以前のように胸を張って人に言える仕事に就けずに苦しむこともあるでしょう。
と、社会復帰を諦めてしまい、また出し子業務に自らの意思で戻る者も一定数います。
出し子は窃盗罪で逮捕される可能性大
自身が犯罪をしている自覚がなくATMでお金を下ろすなどの、出し子業務を担当しており、気が付けば逮捕されて実刑判決を受けることになるケースがあります。
特殊詐欺は、被害金額の一部が反社会性勢力の資金源になりやすいこともあり、厳罰化の傾向が強まっています。
窃盗罪に関する刑法の条文を見ていきましょう。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する
第二百三十五条
ほんの出来心であっても、場合によっては、十年以下の懲役に処されることがあるのです。
「特殊詐欺の案件なら人を騙すんだし、詐欺罪じゃないの!?」と思われた人がいるかもしれません。
他人のキャッシュカードを用いて、現金を引き出す行為は詐欺罪よりも窃盗罪が該当です。
詐欺罪は「人を欺いて財産をだまし取る」といった案件で成り立つものです。
受け子が詐欺罪で、出し子は窃盗罪で立件されやすいのにはそういった違いがあったのです。
初犯の出し子であっても、いきなり実刑判決が下されることも決して珍しくありません。
まとめ
出し子募集について、詳しく解説してきました。
2021年に入っても、新型コロナウイルスの勢いが弱まらず、その影響で困窮している人がかなりいることが予測できます。
だからといって安易に出し子の募集に手を出すと、一生涯、犯罪者のレッテルを貼られたままの生活が、あなたを待っているかもしれません。
詐欺師は柔和な言葉や、甘い言葉を使って巧みに忍び寄るものです。
「何が犯罪に加担する行為なのか?」「どういったところから詐欺の勧誘が多いのか?」などを、インプットして詐欺に備えましょう。
万が一、詐欺師からアプローチされた際にはいち早く気づける状態にしておくのが理想的です。
あなたも詐欺に遭遇しないよう、気付きの知識である「トラストリテラシー」を、ぜひ一緒に高めていただけると幸いです。